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ケリング・グループ
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2025年6月30日
2025年、「ケリング・ジェネレーション・アワード」は中国で4回目の開催を迎えると同時に、日本、サウジアラビア、そして世界のジュエリー業界へとその展開を広げています。スタートアップ企業に焦点を当てたこのアワードは、ケリング・グループの事業戦略において、未来志向の重要な役割を担っています。本稿では、「ケリング・ジェネレーション・アワード」の背景と、ケリング・グループが10年以上にわたり推進してきた持続可能性への取り組みの一環として、このアワードが果たしている役割について詳しくご紹介します。
2019年10月14日(月)、中国・上海で開催された上海ファッションウィークの壇上に、ケリングの会長兼CEOであるフランソワ=アンリ・ピノーが登場。テキスタイルのバリューチェーンにおける持続可能性の課題に取り組む中国のスタートアップ企業3社に、初の「ケリング・ジェネレーション・アワード」を授与しました。この瞬間は、ケリング・グループにとっても、ラグジュアリーファッション業界における持続可能なイノベーションの定着と加速に向けた重要な一歩となりました。
“「『ケリング・ジェネレーション・アワード』では、持続可能で倫理的なファッションの実現に向けたイノベーションを発掘し、そのスケールアップを支援しています。業界の枠を超えたコラボレーションを促進し、次世代に力を与えることを目指しています」 ”
現在、「ケリング・ジェネレーション・アワード」は、次世代の持続可能なラグジュアリーを推進する原動力として、世界中のスタートアップ企業を発掘、表彰、支援しています。イノベーションと創造性を促進するとともに、ケリングの理念を広く発信する役割も担っています。
ケリングのチーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者のマリー=クレール・ダヴーは、次のように述べています。「私たちは、代替原材料、グリーンサプライチェーン、小売、そしてサーキュラーエコノミーを通じて、環境および社会にポジティブな影響をもたらすスタートアップ企業を支援したいと考えています。これは、ケリング・グループにとってだけでなく、ラグジュアリー業界全体にとっても恩恵をもたらす取り組みなのです」
ラグジュアリーファッションとビューティ業界において、持続可能な未来を築き、それを確かなものにするために、マリー=クレール・ダヴーとフランソワ=アンリ・ピノーは対話を重ねてきました。「ケリング・ジェネレーション・アワード」は、そうした議論の中から生まれた取り組みです。高級ブランドが集まるアジアは、ラグジュアリーの発展において企業と消費者の双方にとって重要な市場であり、同時にイノベーションの鍵を握る地域でもあります。この地がアワードの出発点として選ばれたのは、まさに必然と言えるでしょう。
ダヴーが主導するこのコンペティションは、革新的なアイデアと可能性を秘めたスタートアップ企業を発掘することを目的としています。審査員の選定と参加者の募集には、約2か月の準備期間が設けられています。こうして選ばれた業界のリーダーやケリングの現地CEO、アドバイザリーボードのメンバーで構成される審査委員会が、面接およびプレゼンテーションを通じて応募者を評価します。なお、このアワードは2年に一度開催されています。
受賞企業3社は、革新性、商業的成功の可能性、技術的な成熟度、ファッションおよびビューティとの関連性、そして社会・環境へのインパクトといった具体的な基準に基づいて選出されます。受賞者には、ケリングの専門家とともにパリで1週間を過ごし、各ブランドを訪問したり、出資者候補に向けてピッチを行ったりする機会が提供されます。さらに、最優秀企業にはプロジェクト支援の一環として、10万ユーロの助成金が授与されます。
いよいよ幕開け
「ケリング・ジェネレーション・アワード」は、2016年にシリコンバレーで設立されたスタートアップ企業で、現在では中国に4つのイノベーションセンター(北京<本社>、上海、重慶、深圳)を展開するファッションアクセラレーター、Plug and Playとの提携によりスタートしました。
第1回では、50社を超える応募の中から、次の3社が受賞企業として選ばれました。1位は、有機廃棄物から天然染料を生産する、廃棄物ゼロの循環型システムを開発するMelephant。2位は、プリントおよび染色工程における革新的な水処理技術を提供するHeyuan。3位は、過剰生産の回避に貢献する、AI適応型のサプライチェーン最適化に注力するFeiLiu Techでした。(※「ケリング・ジェネレーション・アワード」創設以来の全受賞企業一覧については、こちらをご覧ください)
現在では、授賞式は上海ファッションウィークの主要イベントの一つとして定着しており、2025年には第4回の開催を迎えます。さらに、2024年には日本とサウジアラビアでもアワードが始動し、同年にはジュエリー業界を対象とした新たな取り組み「ケリング・ジェネレーション・アワード×ジュエリー」も創設されました。
地域性のあるコンペティション
「ケリング・ジェネレーション・アワード」では、開催地ごとにその地域特有の課題や強みを活かしたテーマが設定されています。第1回は中国で開催され、サプライチェーンの課題に焦点が当てられました。続く2021年の第2回も中国で開催され、「生物多様性とその先」をテーマに、ファッション業界におけるグリーンイノベーションの推進と、生物多様性の保全・回復に取り組む企業が評価されました。2023年には「完全なる循環へ」をテーマに掲げ、Redesign(再設計)、Reuse(再利用)、Recycle(リサイクル)、Regenerate(再生)、Recognize(認識)という「5R」の観点から、循環型社会の実現に向けた取り組みが評価されました。そして2025年は、「ラグジュアリー業界におけるウォーターポジティブ・インパクトを切り拓く」をテーマに展開されています。
ケリングのサステナリティ・イノベーション担当であり、「ケリング・ジェネレーション・アワード」のコーディネーターを務めるアンヌ=ガエル・ラモールは、次のように述べています。「この『水』というテーマは、幅広い層の関心を引くでしょう。たとえば、水資源の供給を担う地方自治体などとの連携も含め、枠組みを超えたコラボレーションが求められます」
初開催となった日本では、「サステナブル・ファッションとビューティ」をテーマに、製品のライフサイクルにおける主要な段階――原材料・素材、製造、リテール、消費者エンゲージメント――に焦点が当てられました。グローバル・イノベーション・プラットフォームであるCIC Tokyoとの提携のもと、約130社が応募しました。
一方、サウジアラビアでは、同国の公的機関であるファッション委員会と緊密に連携し、顧客エンゲージメント、サーキュラーエコノミー、水資源の保護に取り組む企業から500社を超える応募がありました。ラモールは次のように語っています。「サウジアラビアのラグジュアリーファッション業界は、まさにこれから発展しようとしている黎明期にあります。この業界に対する関心と成長への期待は非常に高く、ケリングはこの地域に持続可能な生産が根付くよう、サステナビリティに関するガイドラインに沿った開発支援を行っています」
ジュエリー-独自の世界
ケリングのジュエリーブランドにとって、持続可能性は決して新しい概念ではありません。たとえば、ブシュロンは2022年、独自のガラス固形化プロセスによって産業廃棄物をアップサイクルし、現時点で最もリサイクル率の高い素材のひとつである「Cofalit®*(コファリット)」を使用した革新的なカプセルコレクションを発表しました。
そして2年後、こうした持続可能性への取り組みをさらに推進するため、ケリングは新たなプロジェクトの構築に踏み出しました。2024年、CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)との提携、ならびにミラノ工科大学のコンソーシアムであるPoli.Designの科学的協力のもと、「ケリング・ジェネレーション・アワード×ジュエリー」が設立されました。
(*Cofalit® は Europlasma グループのブランドです)
ケリングのジュエリー・イノベーション・ラボ責任者であるフランチェスカ・マンフレディは、次のように語っています。「今回の『ジュエリー』をテーマにしたアワードは、これまでのアワードとは異なり、特定の地域に限定されず、世界中のジュエリー業界を対象としています。ゴールドや貴石といった素材を、いかに持続可能な形で活用できるかに重点を置いています。アワードの対象となる分野は異なりますが、その目的は共通しています。すなわち、サステナブルなデザインにおいて卓越した才能を発揮する、先見性ある人材を表彰・育成し、業界の変革に取り組む若い学生やスタートアップが集まる国際的なコミュニティを構築すること。そして最終的には、ジュエリー業界を変革する創造性と責任あるイノベーションを後押しすることです」
「ケリング・ジェネレーション・アワード×ジュエリー」には、ジュエリーおよびサステナビリティを専門とする世界各地の大学・教育機関10校と、この分野で高い評価を得ているスタートアップ企業が参加。課題として与えられたのは、「廃棄物を価値あるジュエリーへと昇華させるデザインの提案」でした。受賞者は、2025年6月にラスベガスで開催される世界最大級のジュエリー業界見本市、JCKで表彰される予定です。
未来のラグジュアリーを守る
「ケリング・ジェネレーション・アワード」は、持続可能性への取り組みを表彰するだけでなく、ビジネスチャンスの創出や、「伝統の守り手」と「若き変革者」が垣根を越えてコラボレーションを行う場も提供しています。
ケリングのサステナビリティ・イノベーション担当であるアンヌ=ガエル・ラモールは、次のように語ります。「ケリングは、これまでに培ってきた知見や業界での実績を受賞者と共有し、受賞者は各ブランドが実装可能なコンセプトを提案します。これは、事業開発に向けた本物のチャンスなのです」
また、チーフ・サステナビリティ・オフィサーのマリー=クレール・ダヴーはこう述べています。「非常に多くの起業家やスタートアップが『ケリング・ジェネレーション・アワード』に応募してくれていることを、大変嬉しく、また心強く感じています。今後も、新たなテーマの探求などを通じて、このプログラムをさらに発展させていくつもりです。そしてその成果は、他の企業とも積極的に共有していきたいと考えています。これは、業界全体を変革するための大きな一歩となるでしょう」